破壊の実

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「ついに完成したぞ!」

博士は満足げに黒い玉を掌の上にのせた。
その声を聞きつけた助手が隣の研究室からやって来た。
「ほんとに完成したんですか!あの破壊の実を」
「ああ偶然の産物だったよ。ある薬品を融合させる途中で驚異的な科学変化を起こしたんじゃ」
「国王様もきっと大喜びのことでしょう」
国王は軍事力を上げるため、博士に破壊力の高い薬品を作らせていた。
博士が研究していたのは人間を巨大化させるものだった。つまり巨人を量産し、敵を破壊するつもりだ。助手もそれを知っていた。
「気が変わった」
「どういうことですか」
「世界を征服するぞ。私が巨人になる」
「気でも狂ったんですか!」
博士は破壊の実を飲み込むと瞬く間に巨大化していった。
天井を突き破り、研究所の屋上を突き破った!
「世界は私のものだ!」
雲を突き抜け、大気圏を突き抜けた!
博士は、爆発し破壊された。

欲望が実を滅したのである。
SF
公開:18/06/25 20:04
破壊 博士 巨人

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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