尊敬する父の引退

0
89

父は一代で企業を興し、今や百人余の従業員を抱えるそれなりに大きな会社に育て上げた。
僕はそんな父を尊敬している。
父は社会からの圧力に負けず、社員を家族同然に迎え入れた。
そんな会社だからこそ、僕も社員たちの協力を得て、父の跡継ぎとして成長を続けることが出来た。

そんな父が60に差し掛かった頃、僕を社長室に呼び出した。
「儂はそろそろ引退しようと思う。お前が次の社長だ」
そう告げられるも僕は納得できない。
父はまだ元気だし、僕だってまだまだ学ぶべきことがある。
父に引退の理由を聞いた。
「もうけがないからだよ…」
父は寂しそうに禿げ上がった頭を撫でる。
そう言えば、父はこうした言葉遊びや願掛けが大好きだ。
「お前もハゲかけたら覚悟したほうがいい…そして、ハゲたら潔く社長の座を譲るんだ」
父はそう言って、引退した。

僕は決意した。
父のようにならないためにも、今日から育毛剤を使おう。
公開:18/06/27 18:54

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容