走るヘッドホン

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ブーンブンブン。ブンブンブンブーン。
「うるせえ……明日テストなのに勘弁してくれよ」
1台のバイクが家の近所を暴走しているようだ。
ベッドから立ち上がりカーテンを開ける。ヘッドライトをギラギラさせたバイクが、向かいの公園へと入っていった。
どんな奴が運転してるんだろ。そうだ、こっそり様子を伺って、相手次第では文句の一つでも言ってやろう。スウェット姿のまま家から飛び出した。
滑り台の前に大きなバイクが停まっている。その隣に見覚えのある少女の姿があった。
学校一の才媛。周囲からの期待を一身に背負った、絵に描いたような優等生。そんな我が校の生徒会長。
思わず少女に駆け寄るが、言葉が出ない。やっとの思いで
「バイク、うるさくないの?」
なんとも間の抜けたことを口にした。少女が微笑む。
「うるさいのが嫌だから、バイクに乗るんだ」
それは大きなエンジン音で覆われた、小さな孤独のようだった。
青春
公開:18/06/27 01:07
更新:18/06/27 09:21

かわかむ( 茨城 )

クスっと笑っていただけるような、そんな作品が書ければと思っています。

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