満腹道場

6
90

「悩み?それなら満腹道場よ」
同期のミチルに紹介されて怪しい祈祷師のところへ行った。
「悪霊に取りつかれておるな。満腹になれ!なに?イカサマだと?キサマ、満腹な男の後ろに幽霊が立つところを見たことがあるのか!」
ない。映画でも漫画でも憑りつかれる奴は細身だ。俺は満腹になり、助かった。

「リストラの危機!?満腹になれ!リストラされた男が福福しいのを見たことあるか!?」
ない。
「離婚の危機?もうキサマにはわかろう。そう、満腹じゃ」
妻は飯マズだが家庭は円満。

ある日、祈祷師は言った。
「もう教えることはない。知識は満腹だろう。道場はお前に任す」
祈祷師は旅支度で立ち上がる。
「先生、どこへ……?」
「長い旅になる。わしは行かねばならぬ」
「まさか……?」
「行先は言わずともわかっておろう」
「はい」
俺は豊かに育った腹の肉をつまむ。
「悩みはメタボですね」
祈祷師は頷き病院へ向かった。
ファンタジー
公開:18/06/24 17:57

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容