人生の下山

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やっとたどり着いた頂上。思わず叫んでしまう。
「やっほー!!」
周りにある山々にこだまして自分の声が響き渡った。

しかし、
思ったより爽快感がない。こんなにも苦労してのぼったのに。

思えば、いつもこうだった。
小さい頃から親に「いい大学に入って、いい会社に就職して。」とありきたりなことを言われて、それに従って生きてきた。事実、特別金持ちと言うわけではないが、人がそれなりに羨むような60年の人生を送ってはいた。

しかし、そこに爽快感や高揚感といった気持ちは無く幸せとは言い難い違和感がのっぺりと自分の心に張り付いていた。

何かアクティブに行動すればと思って始めたこの登山でも結局のっぺりは剥がれない。

ふと、空を見上げる。
なぜか不思議と空はいつもより高く見えた。

そして空と山が自分に訴えかけているようにある声が聞こえた。
「下山こそ楽しまなければならないんだ」と。
その他
公開:18/06/25 12:32
更新:18/06/25 12:39

サラダバー( 東京 )

28歳。

 

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