カバのカバー

「カコちゃんが居てくれて本当に助かるわ〜」
孤島の老人ホームでちょくちょく言われるようになった。受け入れてくれた証拠だろうか。
ここは人口の8割が70歳以上の老人。20代は私だけ。

「カコちゃんは本が好きなんやね。あれ？そのカバー？カバ？」
「はい」
カバと1羽の鳥の写真。

幼稚園の先生が教えてくれた。
「この写真は大きなお口を開けたカバさんとそのお口の中にいる鳥さんです。鳥さん食べられちゃうよ〜って？そうだねー。でも、鳥さんは休んでいるの。大きな大きな湖で鳥さんが休む場所が無いから、カバさんがお口を開けてあげて休ませてあげてるの。みんなも困っている人がいたら助けてあげようね」
「は〜い」

私にとって衝撃的な写真だった。あの時の思いを忘れないために大好きな本のカバーにした。カバのカバー。何も取り柄のない私が出来ることからやればいいと教えてくれたカバさん。カバさんに感謝。