炭酸ジャズを夜に踊る

友人に連れられて僕はそのジャズ喫茶店を初めて訪れた。案内されるはテラス部分。夏の夜の濃厚な気配が、肺いっぱいに満たされる。その日は空気が震えていた。祭りの前のような、ワクワクとした雰囲気が辺りを満たす。
「みなさん、グラスはお持ちです？炭酸でよければなんでも好きなもの！」
リーダーらしいテナーサックス奏者がウィンクした。だけれど僕の、いや他の客だって水しか持っていないように見えた。不思議がっているうちに演奏が始まった。煌びやかなトランペットの音が、空気と体を震わせる。曲目は「TANK!」。某アニメのOP曲が、派手に華やかに演奏された。空気が踊る。心が震える。頼んだ水の色が変わる。そんなバカな、曲に震えて炭酸が溢れ出す。それはビール？ジンジャエール？いいや、なんでも好きなもの！
客も液体もスウィングして、盛り上がりが最高潮に達するとついに飲み物たちがクラッカーみたいに発泡した。