笛吹き太郎

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 昔、笛が上手な太郎という青年がいた。村人は、
「あの笛を聞くと心が和む」
「つらくても頑張ろうという気持ちになるな」
 と、誉めそやす。
 その噂を聞いた領主の娘が太郎の笛に惚れこみ、婿に迎え入れた。それからの太郎は、好きな笛を吹く他は、毎日食っちゃ寝。
 ある日、村人達が高い税に耐えきれず反乱を企てているという噂を耳にした。太郎は領主に、
「私の笛で、反乱を鎮めてみせます」
 と言って村に行き、笛を吹いた。が、さんざんになじられ、縄で縛られてしまう。
「なぜです。僕の笛を聞くと心が和む、頑張ろうという気持ちになると言っていたのに」
「それはお前が働き者で村の仲間だったからだ。領主の娘婿となったお前の笛など、腹立たしいだけだ」
 結局、笛の音など、どんな立場の者が吹いているかによって印象が変わるあやふやなものでしかなかったのだ。うなだれた太郎の首がはねられ、血まみれの笛が地面に転がった。
その他
公開:18/06/23 21:08
更新:18/06/24 01:22

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