かつらおじさん

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 かつらおじさん、というあだ名のおじさんがいた。いつも公園のベンチに座っているのだが、明らかにかつらを被っているのがばればれで、それがおかしくて、僕らはみんな陰で、かつらおじさん、と呼んでいた。
 ある日、ガキ大将のゆうちゃんが「あのかつらを取ってみようぜ」と言い出した。そこは子どものことである。やろうやろう、と盛り上がり、その場の勢いで、かつらおじさんのもとへ駆け寄った。僕らがかつらおじさんに話しかけている間に、こっそりゆうちゃんが彼の背後に回り、タイミングを見計らって、かつらを奪う。その瞬間、かつらがどこかへ消えた。おじさんの頭は、予想通りのはげ頭。こらっ、と怒ったので、僕たちはあわてて退散した。それにしても不思議なのは、あのかつら。いったい、どこへ消えたのだろう?

 その後、ゆうちゃんがおねしょした布団にかつらが被さっていることが判明したのは、また別の話である。
その他
公開:18/06/21 21:39
更新:18/06/21 22:01

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