僕のダイイングメッセージ

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黒ずくめの服装をした男に帰宅途中の駅で呼び止められた。
「私、成仏コンサルタントのもので、一言お伝えしたいことがありまして…」
その男は妙な自己紹介の後、僕がもうじき突然死すること、突然死する人が成仏できないケースが多く霊界で問題になっていること、悔いが残らないように突然死の直前に連絡するサービスを始めたこと、少し前は死神と呼ばれていた事を手短に語った。
そんな事を信じる方がおかしいが、彼の目が真実である事を僕に悟らせた。そして、「成仏するために悔いなき行動を」と言い残し、消えて行った。
家には妻と娘が待っている。彼女らを再び抱きしめたい。でも時間が…。今気づく、最愛の日常が、最も遠い。
最後まで二人を思っていた証を残すため、今出来る事…。僕は駅ビルに飛び込んだ。

男が救急車へ運ばれる。
お客様が購入したと、店員が縫いぐるみを救急隊員に手渡した。縫いぐるみは柔らかな微笑みを浮かべている。
ファンタジー
公開:18/06/22 23:23
更新:18/06/24 09:49

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
よろしくお願いします。

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