隙間指

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 ふっと照明が消えた。リビングのソファで繕い物をしている時だ。暗くて何も見えなくなったが三十センチ先で襖が開く様に細い光の縦筋が入った。もちろんそんなところに襖などない。
 その隙間から指先が出て来た。何かを確かめるように上から下へ下から上へと移動させた後、わたしの目の高さで止まった。
 そう言えば母も隙間指を見たと聞いたことがある。
 怖くて持っていた針で思い切り突いた。
 驚いたように指が引っ込むと隙間が閉じて照明が点いた。
 結局あれは何だったのかわからずずっと忘れていたが、今また目の前で隙間が開いたので思い出した。
 だが今度は隙間の向こうが真っ暗だ。
 ああそういうことか。
 指を刺し入れ上下に動かしてみた。向こうのわたしはさぞかし驚いているだろう。もうすぐ来る針の痛さを待ち構えていたが指を挟む刃の感触に母の話の続きを思い出した。
 母は裁ちばさみでその指を切り取ったという。
ホラー
公開:18/09/02 04:37

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