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僕はいつものように山裾を歩いていた。背の高い草木が遠くまで生い茂り、鳥や蝉たちが一斉に交響曲を奏でる。見慣れた景色。聞き慣れた山の喧騒。
ひと休みしようと倒木に腰を下ろすと、木々の隙間から建物が見えた。青く塗られた木の壁の、古めかしい構えの洋風の家。
「こんなところに家なんかあったっけ?」
僕は近づいてみた。扉に『Entrance Free』と小さな手製の看板が掛けられてある。
僕は近づき、ゆっくりと扉を開けた。中は意外に広い。調度品など何もなく、人のいる気配もない。
部屋の中央に向かうと、壁の巨大なフレスコ画が目に入った。鉄の帽子をかぶり、横を向く一人の少年。何かを伝えたいのか、口から煙のようなものをぽっと吹き出している。
今にも語り出しそうなその横顔に、僕は思わず声をかけた。
「こんにちは」
返事はなかった。
ただ僕の言葉の残響が、静寂の中に木霊するだけだった。
ひと休みしようと倒木に腰を下ろすと、木々の隙間から建物が見えた。青く塗られた木の壁の、古めかしい構えの洋風の家。
「こんなところに家なんかあったっけ?」
僕は近づいてみた。扉に『Entrance Free』と小さな手製の看板が掛けられてある。
僕は近づき、ゆっくりと扉を開けた。中は意外に広い。調度品など何もなく、人のいる気配もない。
部屋の中央に向かうと、壁の巨大なフレスコ画が目に入った。鉄の帽子をかぶり、横を向く一人の少年。何かを伝えたいのか、口から煙のようなものをぽっと吹き出している。
今にも語り出しそうなその横顔に、僕は思わず声をかけた。
「こんにちは」
返事はなかった。
ただ僕の言葉の残響が、静寂の中に木霊するだけだった。
ファンタジー
公開:18/08/31 22:29
クリムト
北オーストリアの農家
第27回ゆきのまち幻想文学賞「大湊ホテル」入選
第28回ゆきのまち幻想文学賞「永下のトンネル」長編佳作
一期一会。
気の向くままに書いては、読んで、コメントしています。
特に数学・物理系のショートショートにはすぐに化学反応(?)します。
ガチの数学ショートショートを投稿したいのですが、数式が打てない…
書こうと考えてもダメで、ふと閃いたら書けるタイプ。
最近は定期投稿できてないですが、アイデアたまったら気ままに出没します。
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