くそくらえのはなし

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 天然の門――背の高い立派な果樹がお互いに枝をさしかわすその下をくぐると、家の脇に据えた腰掛に足を置き爪を剪っている主人がみえる。この人は王国一番の大学で教鞭を執っていたこともある才人で、今日ではたいへんな流行作家として知られている。
 さて、ある日その評判を大臣づてに聞いた国王はいたく興がって、云った。「その者に勲位を授けようじゃないか」
 ところがとつぜん届いたこの通知が主人には気にくわない。受勲だけでも寝耳に水だのに、役所からの書状は授与式を行うから明朝十時までに出頭せよとのみ命じて、こちらの事情を顧慮するふうもないのである。折柄下痢に苦しんでいたことも手伝い、むか腹が立つのに委せて式も勲位も願い下げだと書いて送ってしまった。
「お蔭であちらさんからはすっかり鼻摘みものさ。つまり、封蠟にアレを混ぜて出したからね、とんでもなく臭かったのはおれがうけあうよ」
 とは嘘か実か本人のベン。
公開:18/08/31 21:15

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