絵画旅行

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男はため息をついた
車椅子生活になって数年が経つ

昔は仕事や旅行で海外に
よく行ったものだが

今は自宅と近所の商店街を
往復するばかりである

近所の肉屋でコロッケを
買った帰り

福引きを引くと
カランカランと甲高い鐘が鳴り
青年が「おめでとうございます‼︎
特賞の絵画旅行です」と叫んだ

絵画旅行とは何かと聞くと
好きな絵の中を旅行できる
のだという

試しにクリムトの北オーストリアの
農家に入ってみる

水色の家とそれを囲む新緑の森を
私は久々に自分の足で歩き
やがて丘の向こうまで走りだした

次から次に私は美術館の
名画の数々を通して
世界中を走り周った

いはやはとても良い旅だったよ
こんな素敵な物
一体誰が作ったんだい

すると青年は
「ある偉大なる科学者が
絵画旅行装置を
完成させる直前の実験中に

事故に遭いそのまま消息不明に
なりました会えて嬉しいですよ
お父さん」
SF
公開:18/08/31 20:57
更新:18/11/17 00:09

春星( 神奈川県 )

春星と申します

自宅では一児の親
職場では会社員

そして通勤電車の中では
自称ショートショート作家に
大変身‼︎
車窓を見ながら今日も
ネタを考えています

8月22日作品の星が100を超えました
とても嬉しいです!皆さまに感謝

 

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