ファンタジー

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昔、妖精の写真を見たことがある。
こんなファンタジーが実際に存在するのだと思った。
そんな頃、もしかしたら、と思う体験をした。

祖母の家にいた時だった。
退屈で、玄関前の階段に一人座っていた。
森に射し込む陽の光が、緑や花々を照らしている。
静かな時間。
ふいに、何かを感じて顔を上げた。

無数の目が見ている。

花に、葉の影に、木々のざわめく音の中に。
たくさんの目が。
注がれるのは、好奇。蔑み。圧力を感じる視線。視線。
身動きできなかった。
何か、を見極めたい気持ちと、恐怖で。
感じ取ろうと必死で、近づいてくるのでは、と緊張した。
力が入って、息も止めて。

突然、声がした。
祖母の声だ。
はっとした空気とともに、視線も何かも散り散りになった。
ただ最初と同じ風景だけがあった。

そんな、もしかしたら、は子供時代のよくある話だ。
寂しいけれど、今はもう何のファンタジーも感じられない。
ファンタジー
公開:18/08/31 20:40

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