名画の条件
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今、私の眼前に二本の立派な木が在る。
木には葉が鬱蒼と繁盛してゐて、それに負けじと黄色い花が葉と葉の隙間め一杯に咲いてゐる。
その木の下に目を遣ると、これまた春の草草がそれぞれ思い思いに花を咲かせて、まるで合唱してゐるかの様で思わず目を瞑る。
さうして暫くうつとりした後、目を開けるとその木と草の向かうに、一軒の家が在る事に気付いた。
何の変哲も無い、何処にでも在る様な農家風の家なのでうつかり気付かなかつたのだらう。
けれども不思議にその家に心惹かれるものを感じた私は、無意識に家に向かつて歩いてゐた。
その事に気付く間に丁度二本の木の間に差し掛かつてをり、其処からもう一歩踏み出すと、その瞬間、目の前に在つた家が消えてしまつた。
……暫し呆然とした後、白昼夢でも視てゐたのかしらと後ずさると、また突然家が目の前に現れた。
絵描きの友人が額を作つて欲しいと訪ねて来たのはその夜だつた。
木には葉が鬱蒼と繁盛してゐて、それに負けじと黄色い花が葉と葉の隙間め一杯に咲いてゐる。
その木の下に目を遣ると、これまた春の草草がそれぞれ思い思いに花を咲かせて、まるで合唱してゐるかの様で思わず目を瞑る。
さうして暫くうつとりした後、目を開けるとその木と草の向かうに、一軒の家が在る事に気付いた。
何の変哲も無い、何処にでも在る様な農家風の家なのでうつかり気付かなかつたのだらう。
けれども不思議にその家に心惹かれるものを感じた私は、無意識に家に向かつて歩いてゐた。
その事に気付く間に丁度二本の木の間に差し掛かつてをり、其処からもう一歩踏み出すと、その瞬間、目の前に在つた家が消えてしまつた。
……暫し呆然とした後、白昼夢でも視てゐたのかしらと後ずさると、また突然家が目の前に現れた。
絵描きの友人が額を作つて欲しいと訪ねて来たのはその夜だつた。
SF
公開:18/08/31 20:04
更新:18/08/31 20:14
更新:18/08/31 20:14
1978~。西成郡勝間村の人。単家、布衣の人。短時間労働者。即興演奏者。
俳句雑誌『奎』同人。
2022年イグBFC3優勝(同着)
https://twitter.com/ConchHailuo
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