ひと晩寝かせたカレー

｢あー、よう寝たわぁ」
と言って、あたしのカレーは昼過ぎになってようやく起きてきた。
｢どや、今日もおれのルーを味合わせたろか？」
暑い季節になると無性にカレーが食べたくなる。で、昨日の夜こしらえてはみたものの、全然旨くなかったのよねぇ。
｢たいして旨くなかったし、もういいわ」
カレーは人差し指を横に振ると、
｢昨日のおれとひと味違うぜぇ」
と、自信満々で言った。
ホントかしら？
｢ほれ、ひと口だけ。騙されたと思って騙されてみ」
｢んー、いいわよぅ」
嫌がるあたしに、自らのルーを無理やり押し込んできた。
仕方がない。あたしはひと口だけ、ひと晩寝かせたカレーを食べてみた。
パクンチョ。
｢う、旨いー！」
昨日の夜のトゲトゲしさが嘘のよう！
やはり若いカレーなんて駄目ねぇ。
あたしは更なる快楽を求め、カレーをもうひと晩寝かせてみた。

次の日の朝。
寝かせすぎたのか、加齢臭がするわ⋯⋯。