伝説をつくる村

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 幼女が花咲く農家をバックに空を見上げていた。視線の先には羽虫が舞って、テロップに『妖精の生きる村』。(蟻の結婚飛行を!どこが妖精やねん!)私は下手な関西弁を真似て、鼻息荒くPCを閉じた。
 テレビをつけると妖精特集で、こういうのは確かシンクロって言うんじゃないか。導きだろうか。信じやすい私は翌日農家の前で空を見上げていると、幼女が「私は妖精と友達よ」そう言って、特産妖精ハチミツと妖精Tシャツと妖精キーホルダーを売りつけてきて、「妖精を見たければ一万円」掌をぐいと押しつけてきた。むろん失意、落胆、失笑、涙。
 駅までの道が遠く疲れて、陽が暮れてしまった。灯が村に点りはじめて、それはピカピカ金の折り紙で作ったみたいに吹かれて、頼りなく、静かで美しかった。(コインの表と裏じゃあるまいし!)恨むことのできない私は、すでに村人たちの捏造を許していた。祈りにも似た願いを、人は伝説と呼ぶのだろうか。
ファンタジー
公開:18/08/31 15:35

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