猫の手

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白い招き猫を買った。
何となく故郷の愛猫に面立ちが似ていたのだ。
──シロ。
酷い怪我をして、死に、庭に埋めたと姉から聞いた。
お盆休みも終わろうかというのに、今年も帰郷していない。
いつも見える場所に……そう思い立ち上がるとパキンと根元から招き猫の腕が折れた。
怪我で亡くなったシロにまた怪我をさせてしまった心持ちになる。
私は猫の手をそっと包み、云った。
──シロ。ごめんね。いつか私の所へ帰って来てね。
陶器製の猫の手が頷くようにひくりと動いた──。
──えっ。
驚いて落とした猫の手が、粉微塵に砕けた。
……ニャー。
玄関の外から猫の声がする。
……ニャー。
──シロ……?
特徴のある高い啼き声はシロだ。私は恐る恐る扉を開けた。
そこにシロの姿は無く、代わりに蝶が一頭落ちていた。
シロもよく獲物を持って帰ってきたっけ……。

──私はお返しにシロの好きだった煮干しを焚き、送り火とした。
その他
公開:18/08/31 15:31
更新:18/08/31 20:00

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
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◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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【note】400字以上の作品や日常報告など
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