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嫌な予感がして、ぐっと身体を強張らせた私の後ろから、聞きなれた能天気な声がぶつかってきた。
「佐藤さん、今帰り?」
今井君は、緩く着崩した制服で自転車に跨がったまま、へらりと私に笑いかける。
「後ろ乗ってく?」
「だめ、交通違反」
「さすが正子ちゃん」
「やめて」
品行方正の正子。
そんな風に呼ばれている私は、あだ名通り、正しくないことは受け入れられない性格だ。
二人乗り、制服の着崩し、髪染め。
友達は青春っぽいなんて言うけれど、そんな違反の数々に、私は欠片も惹かれなかった。
中でも今井君は違反を人形にしたような人で、私は彼の近くにいると、いつも落ち着かない気持ちになってしまう。
「引いてくならいいでしょ?」
「自転車の意味ないじゃない」
「いーのいーの。ね、一緒に帰ろ」
言いながら、私を振り返って笑う今井君の隣はやっぱり落ち着かなくて、こんな時間を、私はとても好きにはなれそうもなかった。
「佐藤さん、今帰り?」
今井君は、緩く着崩した制服で自転車に跨がったまま、へらりと私に笑いかける。
「後ろ乗ってく?」
「だめ、交通違反」
「さすが正子ちゃん」
「やめて」
品行方正の正子。
そんな風に呼ばれている私は、あだ名通り、正しくないことは受け入れられない性格だ。
二人乗り、制服の着崩し、髪染め。
友達は青春っぽいなんて言うけれど、そんな違反の数々に、私は欠片も惹かれなかった。
中でも今井君は違反を人形にしたような人で、私は彼の近くにいると、いつも落ち着かない気持ちになってしまう。
「引いてくならいいでしょ?」
「自転車の意味ないじゃない」
「いーのいーの。ね、一緒に帰ろ」
言いながら、私を振り返って笑う今井君の隣はやっぱり落ち着かなくて、こんな時間を、私はとても好きにはなれそうもなかった。
青春
公開:18/09/01 07:53
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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