インストゥルメンタル
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私の学校でのあだ名はサイレント。
理由は音無しいから。やかましい。
周囲のノイズにはうんざり。
ある日、私は心療内科を訪れた。
男の先生だった。
「インストゥル精神療法は初めて?」
音楽療法の一種かな?
説明もなく、渡されたヘッドフォンを耳に当てると、ガラスを引っ掻く不快な音がきこえた。
「これが君の今の精神音。ここは精神音を調律する場所なんだ」
私の内側ではノイズが鳴っていた。
通い始めは、荒野に風が吹き回転草が転がる孤独な音や、凍った湖の氷にひびが入る不安な音がきこえた。
けど、先生の音とのセッションを重ね、息継ぎや歪みの調整なども覚えて、私の精神音はクリアな自然音を取り戻してきた。
「うん、もう大丈夫だね」
ある日、先生が言った。
嬉しい。でも。一瞬の無音。
次の瞬間、私の内側で演奏が始まった。ビッグバンドだ。私の気持ちを後押しするような。音に合わせて、歌い出す。
『先生、私ね』
理由は音無しいから。やかましい。
周囲のノイズにはうんざり。
ある日、私は心療内科を訪れた。
男の先生だった。
「インストゥル精神療法は初めて?」
音楽療法の一種かな?
説明もなく、渡されたヘッドフォンを耳に当てると、ガラスを引っ掻く不快な音がきこえた。
「これが君の今の精神音。ここは精神音を調律する場所なんだ」
私の内側ではノイズが鳴っていた。
通い始めは、荒野に風が吹き回転草が転がる孤独な音や、凍った湖の氷にひびが入る不安な音がきこえた。
けど、先生の音とのセッションを重ね、息継ぎや歪みの調整なども覚えて、私の精神音はクリアな自然音を取り戻してきた。
「うん、もう大丈夫だね」
ある日、先生が言った。
嬉しい。でも。一瞬の無音。
次の瞬間、私の内側で演奏が始まった。ビッグバンドだ。私の気持ちを後押しするような。音に合わせて、歌い出す。
『先生、私ね』
青春
公開:18/09/01 05:18
☆そるとばたあの400字SSは、『ミュージシャンが曲を作るように物語を描く』をコンセプトとしております。
ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語に挑戦中です!
☆拙作のプレイリストを選んでいただきました!
気になられた方は、↓の過去作品も一緒に楽しんでいただければと思います!
【This is そるとばたあ selected by むう】
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