狼と旅人
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まだ子どもたちの父親がとうもろこしの粒くらい小さかった昔、かれがモミとアカマツの森の中へきのこを探しに入っていくと、一人の旅人と一匹の狼に出くわした。狼はちょうど旅人の下穿きをひん剥いて、そのお臀をぺろぺろ舐めているさいちゅうだった。
かれはたちまち気がついて
「お前たちは妻夫だろう」
話しかけたが
「そのとおり。けれどお前の知ったことじゃあないね」
一瞥したっきり取りあわない。
なるほどいわれてみれば、この狼がどんな相手を夫にしていたとて、かれにはかかりあいのないことである。
――それで父さんはふたりに非礼を詫びると、籠いっぱいにきのこを狩ってうちへ帰ったというわけさ。お前たちもいずれ都会へ出るのだから、いらぬ口は利かないよう気をつけるがいいね。
かれはたちまち気がついて
「お前たちは妻夫だろう」
話しかけたが
「そのとおり。けれどお前の知ったことじゃあないね」
一瞥したっきり取りあわない。
なるほどいわれてみれば、この狼がどんな相手を夫にしていたとて、かれにはかかりあいのないことである。
――それで父さんはふたりに非礼を詫びると、籠いっぱいにきのこを狩ってうちへ帰ったというわけさ。お前たちもいずれ都会へ出るのだから、いらぬ口は利かないよう気をつけるがいいね。
公開:18/08/29 22:40
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