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 昨日河北さんが消えた。村の野菜づくりを視察するため、先月から滞在していた。丘に寝転ぶ私を見かけて、明るい声で笑ってくれたのだった。それから親しくなった。古い農家に、青いペンキを塗ったのも私だ。
 そういえば以前、豪雨で山が崩れたとき、やって来た農業指導者も消えた。あの人は作物の育たない痩せた土地に、斑猫色のガラスの筒を振って、魔法をかけた。不思議な魔法のおかげで村は豊かな作物を得たけれど、それからは村長が斑猫色のガラスの筒を振った。
 私は急がなければならない。夜が明ける前には村を出て、遠くに逃げる。さっき恋人のトオルさんが教えてくれた。河北さんと親しかった私は消されてしまうって。両親が心配だ。けれど村八分されたら村を出て、新たな土地で頑張ってほしい。いいきっかけとして。
 向こうに車のライトが見える。旅行者だろうか。私は輝くライトに向かって、転がるように坂を駆け下りてゆく。
ホラー
公開:18/08/31 15:09
更新:18/08/31 23:03

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