黒い悪魔

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村を襲った無数の黒い怪物は、天空から突然飛来した。鳥のように舞い、体内から触角を突出すると、先端から青い毒霧を吐いた。人間を麻痺させ、養分を吸収するためだった。

その青年は一つの家に向かって駆け出した。
無線機から、国防軍隊長の怒号。
『帰還せよ!死にたいのかっ!』
彼は無線機を捨て、森の奥へと進むと、青く染まった家の前に立った。
「生きていてくれ」
彼は家に駆け寄り、ドアを開けると、崩れるように膝をついた。
「ニーナ」
そのベッドの上には、枯れ木のように変貌した妻が横たわっていたのだ。
彼は、妻を両手ですくい上げるように抱きしめ、嗚咽した。
と、その時!窓に無数の赤眼が獲物を見つけたかのように蠢き、窓を突き破って襲いかかった。
轟く銃声、飛散する肉片。
尽きた銃弾。
群がる怪物。
「ニーナ。もうどこにも行かないよ。一緒にいよう、永遠に……」

朝。二つの屍が抱き合うように重なっていた。
SF
公開:18/08/30 22:53

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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