クリムトリックアート

夜の美術館。館長の後ろを私は歩く。
昼間、ある絵を鑑賞中、館長に話しかけられた。
「彼の風景画の秘密に興味はありますか？」

館長は絵の前に立つと手を伸ばし、ベンチをつまんで見せた。
「トリックアートですよ」
絵の外へ投げると、そこには本物のベンチがある。
「この絵には様々な仕掛けが施されていて、実はすべて解体できます。この絵を本当に理解したいのならぜひ挑戦を」
私は解体の虜になった。
窓を開け換気すると窓がとれて歓喜！
絵を揺らすと木々の葉が落ち、楽勝落葉！
二本の大木を組ませると腕相撲を始めて、腕木が折れた！
最後に残った家壁を木琴にして、キン根幹！と鳴らすのには苦労したけど、ついに絵の解体に成功した！
ただの白いキャンバス。
ふと振り返ってみる。
そこには絵の景色が広がっていた。
再び、キャンバスを見るとその向こう側に館長がいる。
「二重トリックですよ。どうしました？ワナワナされて」