80. 天国への嫁入り

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私の曾祖母は若かった頃のことをよく話してくれたが祝言を挙げた日のことだけは記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
その理由がずっと分からなかったのだが、老衰で弱っていく中親戚の人が見舞いに来てくれたので、曾祖母の従姉妹だという人に聞いてみることにした。
その人の話によると曾祖母たちの祝言の日の朝に曾祖父に赤紙が届いたらしく、予定通りその日の午後から祝言は執り行われたのだがあまりのショックにその記憶が抜け落ちたのだろうということだった。曾祖父はその一週間後に出兵して結局帰ってこなかった。

今年も終戦記念日が近づくと曾祖母は悲しそうな顔で曾祖父の遺影を見つめていたがちょうどその日に亡くなった。お盆だから迎えに来たのかな?そんなことを皆で言いながら通夜を迎えた。
死装束は祝言の前日に着ていた着物とソックリなものを着せた。曾祖母の一番幸せだった日のものを。

日暮が鳴きながら8月が終わろうとしている。
その他
公開:18/08/28 09:03
更新:18/12/12 21:03
スクー 記憶のない結婚式

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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