特撮ドラマの現場から

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「カットォォォ!」
撮影スタジオに監督の百瀬の声が響き渡る。
その瞬間、主人公のヒーローと着ぐるみを着た怪獣、そして全スタッフの動きが止まる。
「誰だよこれ置いたの!」
百瀬がオフィス街のミニチュアセットから持ち上げたのは、小さな白い一軒家の模型だった。
「僕です! 森の中に佇む北オーストリアの農家をイメージして造ってみました!」
新人美術スタッフの的場だった。
「みましたじゃねーよ! オフィス街で怪獣が暴れるシーン撮ってるのに、こんな場違いな家使えるか!」
そう言って百瀬が投げた白い家の模型が火薬の爆破準備をしていた操演技師の猿渡に当たると、驚いた猿渡の手が誤って爆破スイッチを押してしまい、オフィス街のミニチュアセットは撮影前に大爆発を起した。
煙が明けると、残ったのは的場が造った白い家の模型だけ。
死んだ魚のような目で自分を睨むスタッフ達に百瀬は言った。
「そ、その家……使おうか?」
その他
公開:18/08/29 14:26
更新:18/08/29 18:51

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