花畑の家

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私は、おじいさんと一緒に暮らしていた。水色と、レモンイエローの煌めく夏の家に。
熱い太陽が降り注ぎからからになった頃、その人は訪れた。
「お客人だよ。背の高い草に阻まれて路がわからなくなったらしい。」
おじいさんは愉快そうに、飾り棚にあるウィスキーの瓶を持ち出した。
ランプシェードにもたれていた私は、夜の隙に屋根裏の客間へ忍び込んだ。
寝支度を済ませ、その人は屋根裏のベッドに腰掛けた。天井の窓だけが、星の灯りに浮かび上がる。
さっきまで居間で寛いでいた私に、その人は気がつかない。
薄茶色にすすけたクマは、おじいさんにとって長年の相棒なのだが。
翌朝、まだ草花が朝露に湿っているのに、その人はかまわず花畑にしゃがみ込むと、スケッチをはじめた。
おじいさんが居なくなって、私はひとりこの家の居間から花畑を眺めている。
ひょっこりその人が現れて、あの夏の日のスケッチを見せてくれないかな、と思う。
ファンタジー
公開:18/08/29 08:18
更新:18/08/29 08:20

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