一人ぼっちが見た幻

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子どもの頃、私には不思議なものが見えた。幽霊か妖精か、何にしても今はもう見えないのだけど、当時は気味悪がられていつも一人ぼっちだった。それでも、私には“それ”が救いだった。森で迷子になった私を慰め、励まし、一緒に帰ってくれたのは、その“幻”だったから。
何故今、そんな事を思い出したかと言うと――

「――そう言えば、さっき見た式場の教会。」
「えっ?」
「近所にあった森の小屋にちょっと似てたな。学校の嫌な奴等に追いかけられた時、俺、そこに隠れて、怖くて心細かったけど、後から同い年くらいの女の子が駆け込んできて、凄く怯えてて、寂しそうで。なんか、しっかりしなきゃって思ったんだ。俺は一人じゃないんだって、教えられた気がして。まぁ、幻でも見てたのかな…って、どうかしたか?」
「……ううん、何でもないよ。」

――ああ。
幻じゃ、なかった。
私達には、大切なものが見えているみたいだ。
昔も、今も。
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公開:18/08/27 16:56
更新:18/08/30 21:30
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詩のぶ

小説、詩、短歌、俳句、コピーなど、読んだり書いたりするのが好きです。ショートショートはこれまであまり馴染みがなかったので、ここで色々試しながら勉強できたらと思っています。
何か作るとtwitterで呟いてますのでよろしかったらそちらでも。

Twitter @shinobu_yomogi

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