幻想動物見聞録・幸宏の場合

僕の姉は所謂、変わった子として生まれました。物心ついた時から物言わず、何を言われてもゆったりと微笑むばかりの人形のような人です。透き通るような髪、まつげ。肌は白く、頬はうっすら赤みがかって、目はルビーのように輝いていつも遠くを見ている。姉は一人では何も出来ない。だから僕が手を引いていて、それが当たり前だった。姉もそうだったようで、僕が寄ると笑ってくれた。異変は突然でした。姉が桃の葉しか食べなくなったんです。同時に動かなくなった。足が芋虫に変わり始めたんです。両親は姉を隠したので、世話は僕一人です。初めは動揺しましたが、慣れました。桃を与えると嬉しそうに食べるんです。今や、首しか残ってません。先のことは知りません。
先生。ただの先生じゃないんでしょ？
姉に会いたくないですか？自慢の姉なんです。美しい姉の姿を誰かに知ってほしい。そして、あのゆったりと笑う優しい姉の笑顔を忘れないでほしいんです。