心の声

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 ダニエルは、口をきかない子供だった。気に病んだ両親は、ダニエルを田舎の祖父母にあずけた。
 ある日、「ダニエル、畑に行ってくるから留守番頼んだよ」と祖父母は、出かけた。
 ダニエルが見ていたテレビの画面が、真っ暗になり、天井の灯りがパカパカと点滅し、消えた。周りを見渡すと、窓からガタガタ音が。ピカッと光が走る。皿がガシャーンと割れた。ダニエルは震え出す。瓶が、床にゴロゴロと転がる。テレビから、「キャー」と悲鳴が聞こえた。顔が引きつるのを感じる。またテレビから「パパ、ママ助けて」と声が。思わず、耳を両手でふさぐ。目からは、涙があふれ出す。
 すると、テレビに、黒づくめの男が映り、「テレビの声はお前の、心の声だ。声に出せばいい、そうすれば希望は叶う」と言い消えた。
 「ダニエル、嵐が来て恐かったろう」と帰ってきた祖父がダニエルを抱きしめた。すると、「僕、帰りたい」と初めて声を出した。
ファンタジー
公開:18/08/26 23:14

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