幸福のかたち
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その画家は大学教授への推薦をうけたが、夢はむなしく消え、失意のどん底にあった。他人の言葉を信じ過ぎた自分が馬鹿だったのだ。男は自分に言い聞かせ、ただ北に向かって歩いていた。
どれほど歩いたことだろう。その家は山深い荒地にポツンと1軒建っていた。オリーブの古木が生い茂り、家を包んでいた。庭には色とりどりの草花が風にゆれている。板塀はしっかりとして、風雪に耐えてきた風格がある。薪が整然と積まれ、窓は綺麗に磨かれている。家が暮らしそのものを物語っていた。
その家を見ていると、心を覆っていた黒い霧がみるみる晴れ渡っていった。急いでカンバスを広げた。筆の動きはすばやく、何かにとり付かれたようだった。描き終えると男は満ち足りた顔でつぶやいた。
「何もいらない。これがすべてだ」
どれほど歩いたことだろう。その家は山深い荒地にポツンと1軒建っていた。オリーブの古木が生い茂り、家を包んでいた。庭には色とりどりの草花が風にゆれている。板塀はしっかりとして、風雪に耐えてきた風格がある。薪が整然と積まれ、窓は綺麗に磨かれている。家が暮らしそのものを物語っていた。
その家を見ていると、心を覆っていた黒い霧がみるみる晴れ渡っていった。急いでカンバスを広げた。筆の動きはすばやく、何かにとり付かれたようだった。描き終えると男は満ち足りた顔でつぶやいた。
「何もいらない。これがすべてだ」
その他
公開:18/08/26 20:38
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