幻想動物見物録『面談』・前

6
16

【桃園の蚕】。そう呼称されることになった『人型』幻想動物、彼女は椅子に座って窓の方を見ていた。 窓の外には小さな桃の果樹園が見えた。小型だが格式のある洋風のお屋敷で、彼女は1人で留守番をしていたということになる。
「姉さん、ただいま」
そう声をかけられても反応がない。幸宏が困惑の表情を浮かべる。
「いつもなら振り向くのに」
知らない人がいるからかと、と私は伝えた。彼女に近寄ると僅かにこちらを見る。微かな不安、興味。極めて基本的な知性と感情が視てとれた。初めまして、と私は握手を求めた。彼女は数秒のあと、ゆったり笑ってーー前脚を出した。柔らかな肉感。本物だ。胸も腹も足も、ふっくらと柔らかで温かそうだ。触れてもいいか許可を求めると、彼女はまたもゆったり笑う。触るとプニプニとして、脈を打っている。何かそういうギミックを着ているわけではなさそうだ。綺麗に平行に並べられた脚たちが、時々動いている。
ファンタジー
公開:18/08/28 00:48
更新:18/08/29 17:22
幻想動物見聞録 番外編 研究員の所見

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
https://minne.com/@sakoyama0705  - ハンドメイドマーケットminne(ミンネ)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容