明日は
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四十年以上勤めた会社を、今日定年退職した。
明日から何をしよう?そんなことを考えながら家路についた。
久しぶりに湯船に浸かってゆっくり考えよう。
洗面台の横にある棚を開けると、入浴剤がいくつか入っていた。藍色の包みを手に取る。見覚えがないが、以前購入したものだろうか。
つるりとした入浴剤を入れると一粒一粒が発光し、流れ星みたいに溶けていく。
「森の香りか‥?」それは懐かしく、優しくて、私を切ない気持ちにした。
湯はたちまち深緑色に変わり、湯気が霧のように私を包む。辺りを見渡すと白い壁は森になった。風で木々が揺れている。
驚いていると無機質だった浴槽は空色になり、やがて小さな家になった。
「この光景は‥妻が好きだったクリムトの北オーストリアの農家だ‥」
その絵の中に自分がいる。
「あなた、お疲れ様」
妻の声がゆっくりと響いた。
明日は妻の墓参りへ行こう。そう決めて私は涙を拭った。
明日から何をしよう?そんなことを考えながら家路についた。
久しぶりに湯船に浸かってゆっくり考えよう。
洗面台の横にある棚を開けると、入浴剤がいくつか入っていた。藍色の包みを手に取る。見覚えがないが、以前購入したものだろうか。
つるりとした入浴剤を入れると一粒一粒が発光し、流れ星みたいに溶けていく。
「森の香りか‥?」それは懐かしく、優しくて、私を切ない気持ちにした。
湯はたちまち深緑色に変わり、湯気が霧のように私を包む。辺りを見渡すと白い壁は森になった。風で木々が揺れている。
驚いていると無機質だった浴槽は空色になり、やがて小さな家になった。
「この光景は‥妻が好きだったクリムトの北オーストリアの農家だ‥」
その絵の中に自分がいる。
「あなた、お疲れ様」
妻の声がゆっくりと響いた。
明日は妻の墓参りへ行こう。そう決めて私は涙を拭った。
その他
公開:18/08/27 18:33
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