物毛交換

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アイは、土と岩の壁でできた地下空間に降りる。地下室には色褪せた絵画や片手のない彫刻が、所狭しと置かれている。
オランはアイを招くように合図をし、大きな一枚岩に置かれた絵画を指し示す。
「これは珍しいものですよ。人口の大半を占めていたノウミンの、完全な形の記録です」
「ほう、絵画に描かれている植物を栽培していたのですか」
「そうかもしれませんが、農作物と別に、庭に木を植えて楽しむのも一般的なことでした。彼らの“ガーデニーン”というしきたりですね」
「んで、これはいくらなの」
「そうですね。汚れもないですし、16000モウほどいただきましょう」
「こんな保存状態は珍しいからな。うちのペットも喜ぶだろう」
アイは右手を差し出すと、オランはアイの腕から16000本の毛を剃り取った。絵画とともにアイが受け取った、赤いバナナの皮には、このように書かれていた。
“人間時代の記録―1900年前後”
SF
公開:18/08/25 00:19

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