海辺のマドレーヌ

海辺にあるケーキ屋さん。
ここには海の食材を使ったケーキや、海にまつわるケーキが置いてあるらしい。
扉を開くと、外の海水のにおいと店内の涼しい空気が混ざり合った。
「いらっしゃいませ！」
店内は貝殻やシーグラスで装飾された、アクセサリーや照明で彩られていた。
並べられたケーキは、微かに潮の香りがした。

その中のマドレーヌに目が留まった。
「そのマドレーヌ、目の前の海でとれた貝をそのまま使ってるんです」

「どんな風に使ってるんですか？」

私はそれを買って、店内のイートインで食べることにした。
「あの海には不思議な力があって、あそこのものは普通の食材とは少し違うんですよ。あそこでとれる貝は、そのままの状態でオーブンで焼くとこのマドレーヌになるんです」
「へえ……不思議」

頷いていると、ふと固い感触があった。

「貝によっては、たまにマドレーヌの中に真珠が入ってたりするんですよ」