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「おおい、松下」
懐かしい友人の背に呼ばわる。
刹那、昨年帰省した際の、同級生の言葉が耳朶に甦った。
――あいつ、行方不明だって。夜中にトイレに行くのを奥さんが見たのが最後だって。
振り向いた松下は、何やら口をぱくぱくさせた。だが、耳をそばだてても何も聞こえない。
寝覚めは最悪だった。部屋は暗く、時計を見るとまだ三時だった。
ふと凄烈な尿意が襲い、僕は不浄場へと駆け込んだ。
すると突然、便器から強烈な引力が発生し、僕を引き込んだ。咄嗟にドアノブを掴むも引力に逆らえず、そのまま僕の意識は途絶えた。
まず眼界に入ったのは、虹色の空だった。双頭の鷲や鳳凰が舞っている。
あたりを見回すと、二股の尾をもつ猫の横で、狂ったように乱舞する松下の姿があった。
この世の全ての幸福を一身に受けたかのような相好を見ると、僕もなんだか嬉しくなって、今にも踊り出しそうになるのを感じていた。
懐かしい友人の背に呼ばわる。
刹那、昨年帰省した際の、同級生の言葉が耳朶に甦った。
――あいつ、行方不明だって。夜中にトイレに行くのを奥さんが見たのが最後だって。
振り向いた松下は、何やら口をぱくぱくさせた。だが、耳をそばだてても何も聞こえない。
寝覚めは最悪だった。部屋は暗く、時計を見るとまだ三時だった。
ふと凄烈な尿意が襲い、僕は不浄場へと駆け込んだ。
すると突然、便器から強烈な引力が発生し、僕を引き込んだ。咄嗟にドアノブを掴むも引力に逆らえず、そのまま僕の意識は途絶えた。
まず眼界に入ったのは、虹色の空だった。双頭の鷲や鳳凰が舞っている。
あたりを見回すと、二股の尾をもつ猫の横で、狂ったように乱舞する松下の姿があった。
この世の全ての幸福を一身に受けたかのような相好を見ると、僕もなんだか嬉しくなって、今にも踊り出しそうになるのを感じていた。
ホラー
公開:18/08/25 10:00
トイレ
二十代半ば、会社員のかたわら執筆しています。
まだ拙い部分もありますが、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
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