うちわもめ

うちわB「おまえ、いくつになった？」
うちわA「62。おまえは？」
うちわB「10月で還暦だ」
うちわB「ところで、俺らがすたれたのは、いつからだ？」
うちわA「前の東京オリンピックの頃から、扇風機のヤツが、幅きかせてきやがった」
うちわB「俺ゃ、還暦を迎えたら自害する」
うちわA「自害って、切骨か？やめろ！自ら命を絶つほど愚かな事はねえ！」
うちわB「大声出すな。役たたねえもんが、生きてたってしょうがねえだろ」
バタバタバタバタ、パタッ。
むうせん「うちわ同士が、何うちわもめしてるんだ？」
うちわA「誰だ、おまえ？」
むうせん「むうさんの扇風機だ。海を渡ったんだが、忘れ物を取りにきた」
うちわB「何忘れたんだよ？」
むうせん「親戚でもないのに、教えられるかよ」
むうせん、うちわもめの事情を聞く。
むうせん「やめとけ、絶対に。今は辛いだろが、生きてりゃ、きっと誰かの役にたつ」