むうさんの扇風機からのサプライズ

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うちわBの心情を察した、むうさんの扇風機は、翌日、うちわBを連れて、東京は葛飾柴又へ飛んだ。

「そりゃあ、さすがの俺もビビったぜ。目覚めたら、扇風機が正座してこっち見てやんの。そんで、深々とおじぎして、そいつが喋るわけよ」
「『この団扇を、是非使ってください』って」
「それ見て、俺ぁ、またビビったぜ。サプライズってヤツよ。その団扇、四国は丸亀産の『男竹平柄』、しかも60年物の逸品だぜ。骨の竹は、当時の一級品の国産真竹。しなりが全然違う。これで煽ると、魚の焼き上がりが別物なのよ」
「うちも240年続いてる老舗川魚料理屋だけど、さすがにこいつと同じモンは2本しかねえ」
「これで、こいつのこれから先は安泰だ。俺が保証する。存分働いてもらうからよ」
「おい、そこの新参者の鰻屋の小僧。さっきから何こっち見てんだ」
「見せ物じゃねえぞ。俺は曲者で、この団扇は宝物だ」
団扇は、一粒、涙をこぼした。
その他
公開:18/08/24 17:13
更新:18/08/24 17:49

渡辺 隆一( 千葉県野田市 )

千葉県野田市在住の、渡辺隆一です。
小学4年生の頃から、文章を書くのが
好きで、今も、趣味で書いています。
ショートショートが、好きです。

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