北オ-ストリアの農家と少女

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 時間は通り過ぎて行くものである。
 夏休み。だが、僕ら美大生には休みという名の製作期間。太陽を睨みながら美術館へ。
【クリムト~愛の風景~展】
 涼しい世界に僕の好きな風景たち。その中の一点【北オ‐ストリアの農家】という画の前に、少女が身じろぎもせず見入っていた。
「ねぇ前世の記憶があるって言ったら驚く?」
「驚かないって言ったら驚く?」
 僕は瞬時に答えていた。少女のほうが驚いたようで、まばたきの回数が増えていた。
「驚くわ。誰も信じてくれないもの。ここ、私が暮らした風景よ。私を描かずに、こんななんてことない絵を描くなんて!」
 僕は、一人脳内邂逅をおこなった。
『怒らなくても。僕らにとっては大事だったろう? 【北オ‐ストリアの農家と少女】か。緑の絵の具を買いに行くよ、シェリ‐』
 時間は通り過ぎて行くものである。
 でも、思い出は蓄積されて行くものである。
 
ファンタジー
公開:18/08/24 01:21

ibara_hime

文章を削る練習をしています。
妄想は得意。感想は苦手。   ・・・・・・です。

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