アラニュイー夜にー

あの時私が「ジャスミンの香りが好き」って言ったから、ある人は私にジャスミンの香水をプレゼントしてくれた。セルジュルタンスのアラニュイ。私はでももう、もしかしたら、ジャスミンの香りだけが好きなわけじゃない。

ジャスミンが好きだというのは、事実だけれど、ジャスミン以外の香りを嗅いだことがなかったのも、事実だった。

嘘になっていく私の中の約束が、ゆらゆらと揺れて、ジャスミンの香りを放ちながら、目の前を流れていく。
多分、これからもいろんな人が、私にジャスミンの香りをプレゼントしにやってくる。

ジャスミン以外の香りを愛することは、罪深い犯罪で。今まで好きだったジャスミンの香りが、いつしか戸惑いの影になる。
私は崩壊しはじめた自分の約束に、今日もまたアラニュイを振りかける。

ー夜にー
私はある夢を見た。
あの日私に、ジャスミン以外の香りの美しさを教えてくれた、あの、通りすがりの、あの人の夢。