花葬風月

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「遺体はこちらです」
祭壇のような台上に棺はあり、夫が眠っていた。
『ここで燃やすんですか?』
老人は頷く。
森の中の煙突もない小屋が火葬場とは信じられない。
「最後の時を燃やすのです」

「ねぇ、聞いてる?」
夫の声で目を覚ますと、そこは私たちの家だった。
『夢を見てたみたい』
夫の顔をまじまじと見る。
「いってくるね」
夫のネクタイを結び直して、私は抱きついた。
『今日は早く帰ってきて』
「またね」

「肉体とのお別れです」
目の前には老人がいた。
「燃やした時の灰を蒔くのです」
老人が灰を夫の遺体にふりかけると芽が出て、急成長し、花で埋め尽くされた。棺はプランターのようだ。
「自然に還ったのです」
そうか、外の花も。
「灰をわけましょう」
握らせてくれた手には何もなかった。

帰り道、不思議とひとりではない気がした。
ここにあなたはいる。
花の美しさや鳥の声や風の音に涙が月なかった。
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公開:18/08/21 19:45

そるとばたあ( 神奈川 )

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