青い夏の夜

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夜だね。うん、夜だね。月がきれいですね。そうですね。
彼女は気づかない。気づいていないふりの可能性もなくはないけれど、もしそうなら女優にだってなれると思う。可愛いし。おなじクラスのイケメンに見つけられてしまったらどうしようって、ぼくはいつもドキドキしている。

夏の風。コンビニで買った、ソーダ味のアイスのおかげかもしれない。涼しくて、ちょっと冷静になれる。沈黙さえ気まずくなかった。

ぼくと彼女はおなじ将棋部。部活帰りに公園のベンチに座って2人きり、アイスを食べている。すごいことだ、勇気を出して誘ってみるものだなぁ、よくやった。そう思いながら、まるで小説みたいにこの光景を客観視するもうひとりのぼくがいる。

きみはどうして来てくれたの。今は何を考えているの。よく読書をしているけれど夏目漱石は読まないの。

主人公に似合う台詞はどれだろう。
野暮な考えが浮かんで、捨てて、ぼくは口を開く。
青春
公開:18/08/22 23:31
更新:18/08/22 23:34
小説 ショートショート 400字物語 一話完結

yuna

400字のことばを紡ぎます。

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