でんしんばしらびと
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「なぁ、お前は“でんしんばしらびと“って知ってるか?」
海からほど近い民宿で行われたゼミ合宿、最終日の明け方。
先ほどまで僕は、健やかに眠っていたのだが、ふと人の動く気配を感じ目覚めると、1つ上の先輩が窓辺に腰掛け、静かに煙草を吸っていた。
何故かその姿に呼ばれるように、ふらりと先輩の側に寄ると、冒頭の問いがもたらされた。
「でん、しん、……ばしらびと? 何ですかそれ」
「何なんだろうなぁ…」
自分で言い出したくせに、先輩は本当に分からないというように首を傾げて考えるそぶりをする。
「わからないんだ。ただの電信柱にも見えるし、人が立っているようにも見える」
「え?」
先輩は吸っていた煙草で、外のとある場所を示すように指す。
「ほら、あそこ」
朝靄がかかる外の景色。朧気だが、けれど確かに人にも電信柱にも見えるような影が、少し遠くで、
「電信柱にしては低いんだよ」
海からほど近い民宿で行われたゼミ合宿、最終日の明け方。
先ほどまで僕は、健やかに眠っていたのだが、ふと人の動く気配を感じ目覚めると、1つ上の先輩が窓辺に腰掛け、静かに煙草を吸っていた。
何故かその姿に呼ばれるように、ふらりと先輩の側に寄ると、冒頭の問いがもたらされた。
「でん、しん、……ばしらびと? 何ですかそれ」
「何なんだろうなぁ…」
自分で言い出したくせに、先輩は本当に分からないというように首を傾げて考えるそぶりをする。
「わからないんだ。ただの電信柱にも見えるし、人が立っているようにも見える」
「え?」
先輩は吸っていた煙草で、外のとある場所を示すように指す。
「ほら、あそこ」
朝靄がかかる外の景色。朧気だが、けれど確かに人にも電信柱にも見えるような影が、少し遠くで、
「電信柱にしては低いんだよ」
ホラー
公開:18/08/22 23:25
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