はっけよいバブル崩壊

昭和初期、若い行事が初めて幕内の取り組みを仕切った時、彼のかん高い「はっけよい」は国技館に響きわたり観客の度肝を抜いた。彼は一躍時の人となった。取り組みを行った力士が「あの声で力が入った」とコメントし、人気に火がついた。面白くなかったのは古株の行事たちだ。彼らは負けるものかと、声を張り上げるようになった。行事の最高位である立行事は当時70歳を越えていたが、彼までも大声で仕切るようになった。
はっけよいバブルの到来である。
千秋楽結びの一番。横綱同士の戦いは長期戦。立行事の絶叫が響きわたる。
「のこった！またのこった！のこってしまった！」
ついに立行事は意識を失い倒れた。前代未聞の取り組みとなった。相撲協会はこの事態を重く受け止め、必要以上に声を出すことを禁じた。バブルの終焉だった。

そして今、時を越え形を変えて、あの現象が若い世代で蘇ろうとしていた。

「モッッツァレラチーーーズ！」