救われない

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骨ばった腕や指が好き。究極は、自分のものが。ある日、白い肌に青白く浮き出る血管を見て、ふと触りたいと思った。

腕に切り込みをいれ、赤い血液が滝のように流れるままに、指を突っ込み血管を取り出す。感触を確かめ、満足した私は事切れた。

死んでからふと思い付き、弟に伝えた。私の血管の全体を見てみたいと。部屋に行った弟は、血塗れで事切れている私を発見した。

腕からとれるだけ、全ての血管を抜き取った弟は、それを丁寧に洗った。管に水を流す作業を、繰り返し、繰り返し。

洗い終わった弟は、そこに蛍を詰め込んだ。私の血管は光り、全てを露にした。本当に満足した私は、もう霊になることはないと思った。

後日、弟は逮捕され、両親は骨張るほど痩せこけた。姉がやれと言ったのだと、信じる者はもちろんいない。

そして私はまだ霊のまま。こんなにも満ち足りているのに、なぜ成仏できないのか、未だにその理由がわからない。
ホラー
公開:18/08/22 22:22

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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