1日の終わりの境 (2)

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「早まらないで」と、ベタな制止に驚いたのは私の方だった。ランニング中だったらしい青年君の声。

橋の上で一人きり、川と空を眺めていたら、つまりはそういう風に見えたのだろう。私は誤解を解き「1日が終わるのを見てたんです」と彼に言った。

赤色に優しく広がった空は、やがて夜に包まれていく。一等星が主張を始め、黄昏時は本当に一瞬、空が黄色になる瞬間がある。

川が美しく輝き、それは尊く感じ、全てを受け入れた時、私は涙が止まらなくなる。計り知れない大きなものに、ここで生かされてることに。

そうだ。私は泣いてもいたのだ。
「ごめんなさい、こんな話。」
いえ、と青年君は言った。
「なんとなく分かる気がします。1人で走っている時とかそんな感じです」

青年君の優しさにくすっと笑い、私は言った。「行かなきゃ。もうすぐ天から迎えがくるんです。」

困惑する青年君をよそに、私は遥か上空の牛車を見つめた。
ファンタジー
公開:18/08/22 19:53
更新:18/08/27 21:56
空から乙女座が落ちてきたら? でも400字じゃ無理で こんな形になりました。 中編で書き直したい

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

104.がおー

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