蚊取線香

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沢山の命が沸き立つ季節が終わろうとしている。私は蚊取線香の一筋の煙を辿って天井を見上げた。
もしバケツにボウフラが湧いてたら、私はどうするだろう。水を投げるか。投げたらどうなる。死ぬぞ。全部だぞ。そう囁かれても私は水を空けるだろう。だってそいつら皆、蚊になるんだ。だから蚊取線香を焚く。刺されると痒いから潰す。痒くなければどうか?それはその人次第だろう。
『蝶々はよくて、なんで蚊はころすの?』
正当防衛?因果応報?とりあえず。
「嫌なことするからだよ」と濁そう。
「どんなことがあっても、自分が嫌なことをされたら守っていいんだ」
「殺してでも?」
心の中から、小さい影が聞いてくる。
「だめだよ。だから蚊取線香を焚くんだよ。嫌なものは遠ざけていいんだよ」
君が傷つかなければそれが一番。誰かに傷つけられたら、守ってあげたい。
「じゃあなんで?」
小さい影が聞いてくる。
ーーなんで、かな。なんで。
その他
公開:18/08/22 18:35
更新:18/08/22 17:04
ただの蚊取線香

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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