記憶がない結婚式

今日は私たちの結婚式。
実は私は、今日結婚する相手の方をよく知らない。よく知っていたはずなのに、わからなくなってしまった。
私は1週間前に、交通事故に遭い、記憶を失くしてしまったのだ。

この1週間、彼の献身的な看病、愛のこもったあたたかい言葉、記憶を失くしても変わらない私への愛情。どれを取っても、私はこの1週間だけの記憶でも、彼のことが好きになった。こんな人と結婚式を挙げることになっていたなんて、私はなんてラッキーなんだろう！1週間で結婚を決める人だっている。私も迷わず彼との結婚式を予定通り挙げることにした。

交通事故というのは、実は故意に起こされたものだった。男の浮気相手が、男が結婚することに逆上して女の車に後ろから追突したのだ。男は女の記憶喪失を良い機会とばかりに心を入れ替えて誠実な好青年を決めているが。記憶のリセットボタンはそう何回も押せない。
純白のドレスの女には、記憶がない。