ついていく。

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「ついていくわ、どこまでも!」
煩い女を振り払うと、強い風に煽られて女が襟裳岬に吸い込まれていった。塀もあったのに、乗り越えて落ちていった。適当な嘘をついたら、正当防衛が認められた。俺の首筋の引っ掻き傷が決め手だ。殺されかけた俺と愛に狂った女の悲恋と扱われた。大変都合が良かった。俺は堂々と帰路についた。
「疲れたなあ……」
ベッドに横になった俺の隣に、何か落ちた。見ても何もない。ただ床が濡れていた。それからは寝る前に何か落ちてくる。電気をつけると、人の形に濡れていて磯の香りがした。ゾッとし首筋をかく。傷が痒いのだ。だから眠れない。
しかし眠気は襲ってくる。ソファでうたた寝すると、天井が盛り上がり、女を落としてくるのを見てしまった。しかも毎晩変形していく。海で腐敗して、喰われて、侵食されて。
「ついていくわ」
女の声が耳につく。磯の香りが鼻につく。首の傷の液が指につく。
あの海が、目に……。
ホラー
公開:18/08/20 08:26
更新:18/09/04 19:34
襟裳岬は北海道の顎の部分 訪れる際には強風注意

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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